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97 年といえば、ジュビロ磐田が初優勝した年である。 優勝までには、ターニングポイントとなる試合が必ずあるものだ。
セカンドステージ柏戦(2−1で勝利)、浦和戦(1−0でVゴール勝利)は、 まさにそれであると言える。 しかし、優勝した時程、忘れ去られてしまうものがある。
それは、敗戦である。そして、それが優勝できなかったファーストステージであればなおさらだ。97年ファーストステージ第5節、カシマスタジアム。
名波浩はチームメイトとピッチに立った。そして周りを見渡した…。 いない…いなかった…。
この日のスタメンは、GK大神、DF古賀、勝矢、アジウソン、山西、
MF奥、ドゥンガ、福西、名波、FW久藤、マビリア。このメンバーを見て分かるとおり、田中、鈴木秀、服部、藤田、中山、スキラッチといった主力が6人もいなかった。一方の鹿島はベストメンバー。
このメンバーにどう立ち向かっていけばいいのか、
ジュビロに残された術は「魔法の杖」と「気持ち」だけだった。「とにかくやるしかない」と名波は思った。必ず勝つという気持ち…。そして、チームの命運は彼の魔法にかかっていた。
左足から繰り出される、魔法がかかったかのようなパス。日本代表でも欠かすことのできない彼にすべてが託された。しかし…開始8分でマジーニョに先制点を奪われてしまう。
だが、毎年優勝候補に挙げられながら優勝できないチームを今年こそ変えたい。その気持ちをもったイレブンは崩れることなかった。名波、ドゥンガで鹿島の中盤に対抗する。
しかし、押し込まれる。やはり力不足なのかと思われた 24分、セットプレーから福西が同点ゴールを奪った。鹿島に主導権を握られながらも、時折ふりかざされる魔法の杖。
スペースに走りこむ選手へ、次々とパスが出て行った。60分、70分と時間が経過する。75分を過ぎたあたりに磐田ベンチが動き始めた。第4審判がサックスブルーのシャツを着た選手と共にサイドに立った。
第4審判が掲げた電光板には「7」の文字が光っていた。78分、名波は交代を告げられた。そして、この瞬間チームは魔法の杖を失った…。それでもドゥンガを中心にチームは耐えた。
80分、90分が経過した。ロスタイムに突入した。……その直後、真っ赤に染まったカシマスタジアムが揺れた。 ボールは磐田のゴールネットに突き刺さっていた…。
鹿島、真中のロスタイムのゴール…。優勝経験もない経験不足なチームは気持ちと魔法の杖だけでは、勝つことができなかった。2−1。結果は完敗だった。
だが、この試合が無ければジュビロがセカンドステージで
優勝できなかったかもしない。なぜなら…。「やるしかない」「勝つんだ」という気持ちで試合に臨むこと、 魔法の杖を生かすためには、選手がスペースに走り、
スペースを作らなければならないというチームとしての「意識の統一」。
「意識の統一」あたりまえのことだと思われることが、なかなかできないのが、
中位、下位に沈むチームだ。これを常に試合で実現できるチームが優勝争いをするのである。「意識の統一」がなされたチームはセカンドステージに快進撃を続けた。
しかし、名波は初優勝のピッチには立っていない。W杯予選中だったためだ。
だが、ワールドカップ出場を決めた後のチャンピオンシップのピッチに、7番の姿があった。キックオフの笛が鳴る。名波は再び魔法の杖をふりかざした…。
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